心を動かされる写真
「この2年くらいですね、写真表現が変わってきたのは。クルマの撮影を数多く担当していますが、以前はプロダクトによった写真表現が求められました。イメージとしては、すべてのパーツを100%見せるというか。本来、自然に撮影していると暗くなってしまう部分があるのですが、そこも明るくして見せる。すべてがキレイであることがクルマの撮影であれば、当たり前でした。もちろん、今もキレイに見せることには変わりはありませんが、無理矢理なことはせず、1枚の絵として自然な写真表現を求められるようになったと思います。例えるなら、街中で撮影したスナップ写真のように。それはユーザーの変化が影響しています。日々、自然な写真表現に数多く触れている彼らの心を動かさなければいけない。だから、感性に訴えかける瞬間を自然に切り取る。そういうオーダーは増えていると思います。
LEXUS LC カタログより
やりすぎと言われるまでやる
「今、撮影するときに大切にしていることは、環境をつくること。スタジオでクルマを撮影するときは、プロダクトがよく見えるようにライティングを組むのが一般的です。でも、私は若干見えづらいライティングだったとしても、自然だと感じたら、あえて撮影します。ちょっとやりすぎたなと思えば、その箇所だけアレンジを加えて再度撮影する。自分が正しいと思ったことは、必ずやってみます。度が過ぎていたら、必ず誰かが止めてくれますから。止めてくれる人がいるなら、止められるまでやってみることも大切だと思うんです。一人の頭で考えるより、みんなで意見出しあって考えたほうが、より精度の高い表現につながります。今までは撮影に慣れることで精一杯で、他のことを考える余裕もありませんでした。それが少しずつできるようになって余裕が生まれたから、今は自分のやりたい表現を追い求めています」。
LEXUS LC カタログより
写真は自由だった
「昨年、レクサスの撮影に参加したとき『自由に撮っていいよ』と言われたんです。本当に自分の好きなことをやっていいよと。じゃあ、自分は何がしたいのか考えたとき、やはり新しい表現に挑戦したいと思いました。そこで本番前にレンズを水浸しにしたり、おもちゃのフィルターをレンズにつけてみたり、レンズとカメラを外してレンズを手持ちで撮ったり。思いついたことは全部試してみたんです。半分以上が失敗でしたが、中にはこういう見せ方はありかもという発見もありました。そうやって撮っていると、写真は自由でいいんだと思えるようになって、以前より写真が好きになりましたね。今は仕事を楽しむというより、写真を撮ることを楽しんでいます。また、そのとき海外のフォトグラファーと一緒に仕事をしたのですが、彼らも楽しみながら仕事をしていました。『考えるな、感じろ』ではないですが、現場のフィーリングで表現方法を変えていく。何事も恐れずに挑戦することで、自分にあった表現を見つけられるのではないかと思います。まずは写真を楽しむこと。その上で、自分の表現を追求していきたいです」。
HARRIER カタログより
細川 類
画像制作本部 フォトグラファー
1987年東京都生まれ。2009年に日本大学芸術学部写真学科卒業後、日本デザインセンターへ入社。最近の仕事に、トヨタ自動車「ハリアー」カタログ、レクサス「LC」カタログなど。第78回毎日広告デザイン賞優秀賞受賞、APA AWARD 2016入選。