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画像制作部が目論む、自動車ビジュアル制作の新しい可能性。その2

FOCUS

Vol.18

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日本デザインセンター画像制作部

画像制作部が目論む、自動車ビジュアル制作の新しい可能性。その2

〈 NDC - GYBOW experience II を経て見えてきた、技術の統合と画像制作ビジネスの現在地 〉

今年3月に開催した第1弾に続き、NDC画像制作部は6月末の4日間、都内スタジオにて「NDC-GYBOW experience II」を開催いたしました。
前回の基礎検証から一歩踏み込み、今回はより実務に直結するワークフローの確立と、先端デジタル技術とのマッチングに主眼を置いた実践的な試みです。
自動車案件に関わる社外のパートナー/フォトグラファーをお招きし、小規模ながら密度の高い実演と思考の場となりました。

01. 広報車の機動性を活かした、既存モデルの新たな活用提案

 今回のエクスペリエンスにおいて私たちが最も大きな手応えを得た一つが、GYBOWの新しい3Dシミュレーションソフトウェアの導入です。従来の「俯瞰図と数値パラメーター」による手探りのアプローチから脱却し、PC上の3D空間で車体への映り込みを事前にシミュレーションし、かつ現場では直感的に確認できる当システムは、撮影行為そのものの時間配分を一新する可能性を秘めています。当日の撮影現場は「一から光を作る時間」から「事前に設計した光を確認し、ディテールを追い込む時間」へとドラスティックに移行できます。現場の工数を劇的に削減することはフォトグラファーを時間的な制約から解放し、スタジオだからこそ実現できる「もうひと工夫」の演出へ意識を注ぎ込むための、価値ある余白を生み出すのです。そしてこの周到な事前準備がもたらす効率化こそが、自動車メーカーの広報車であったとしてもその限られた時間を最大限に活かした、高密度で柔軟な提案を可能にするのです。

 そもそも、すでに発表されている広報車は機密管理や特別な輸送コストが不要であり、公道走行を含めた機動的な運用ができる大きな利点があります。ここで一見すると、「公道を走れる広報車であれば、そのままロケ地に持ち出して撮影すればよいのではないか」と思われるかもしれません。もちろん走行性能を紹介するインプレッションとキービジュアルを結びつけたり、動画を含めたダイナミックな表現にはロケ撮影は不可欠です。しかしことグラフィック領域のロケーション写真に限定するならば、あえて車を持ち出すのではなく、きちんとコントロールされたスタジオにてGYBOWを活用することのメリットと費用対効果を、主観を排し実務上の観点から冷静に見極める必要があります。

 ロケ撮影は狙い通りの効率と結果を常に担保できるわけではありません。かつて、ロケーション背景に実車が佇むリアリティあるビジュアルを得るには、シンプルに「車両を現地へ運ぶ」か、「CGをベースとした複雑な工程を重ねる」かの二者択一しか存在しなかったのです。しかし現在では、撮影からCG、AI、レタッチまでを全方位でカバーする私たちの総合力を背景に、GYBOWがその両極の中間に位置する「第三の選択肢」として既に機能しています。ロケ撮影では避けられない天候や時間のシビアな制約、事故リスクや移動コストを最小限に抑えながら、同じスタジオにいながらにして「朝のクリアな光」から「都会の複雑な光が交差する夜景」へ、さらには「海外の美しいロケーション」へと背景環境を瞬時に切り替える。このようなマルチ展開がもはや現実のものとなった今、制作手法はかつてないほど多岐に渡り、何を狙いにいくか、どのリスクを回避するか、それぞれの場面において最良の組み合わせをしていかねばなりません。加えて広告素材アセットを効率良く早く制作し、幅広い媒体へと無駄なく配備するには、一つの素材がさまざまな場面で役立つエコシステム的な考え方も不可欠です。

 こうした背景から私たちは、制約の少ない広報車であっても展開できる新しいビジュアルコミュニケーションの可能性を常に探っています。たとえば本国から支給されるグローバルアセットを、日本の情緒的な街並みの光へとフットワーク軽くローカライズする試み。あるいは年次改良や特別仕様車の登場に合わせて、既存の世界観を完全に保ったまま、新しいボディカラーやグレードのバリエーションをスマートに横展開していくような運用です。ときにはスタジオならではの抽象的グラフィックの光を実車にまとわせることで、フルCGIでは描き切れない「実車ならではの生々しい存在感」を残したまま、既存のモデルに新鮮でアート性の高い表情を与えることもできます。事前のシミュレーションによる確実性と、もうひと工夫がスタジオでシームレスに噛み合うからこそ、アイデア次第で日々の情報発信やWebサイトの表現力をどこまでも豊かにしていける、そんな今までにない自由なアプローチを、私たちはメーカーの皆様やアートディレクターの方々と一緒に模索していきたいと考えています。

フォトグラファーがGYBOWのセッティングを直感的に把握できるよう、表示を3Dにして視認性とUIを高めたアプリとなった。事前に撮影のシミュレーションができるため、スタジオで追い込める時間が増える。 フォトグラファーがGYBOWのセッティングを直感的に把握できるよう、表示を3Dにして視認性とUIを高めたアプリとなった。事前に撮影のシミュレーションができるため、スタジオで追い込める時間が増える。

Gallery 01

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  Gallery01

Photographer : 遠藤 匡、細川 類、山廣 良輔、岩﨑 慧<br>
GYBOW_Operator : 深谷 征生、平松 大地(VIG) <br>
Image Editing : 深谷 征生、入江佳宏、松本 康希、相坂 宜丈<br>
Producer : 山村 健人、碓氷 和憲、簾 希里子、Tio Jeremy Ryan、田邊 恵<br><br>
Photographer : 遠藤 匡、細川 類、山廣 良輔、岩﨑 慧
GYBOW_Operator : 深谷 征生、平松 大地(VIG) 
Image Editing : 深谷 征生、入江佳宏、松本 康希、相坂 宜丈
Producer : 山村 健人、碓氷 和憲、簾 希里子、Tio Jeremy Ryan、田邊 恵

02. 平面のフレームを飛び越え、「空間の光」を定着させるアプローチ

 そうしたビジュアル表現の探求を進めるなか、GYBOWのリアルで重層的な光を実車に纏わせる検証と活用領域の考察を重ねるうちに、あるシンプルな仮説が浮かび上がります。

 振り返れば写真の歴史は、いかに目の前の光を正確に平面に定着させるかの探求であったと(一面的には)解釈することもでき、感光媒体がフィルムからCMOSなどのイメージセンサーへ変わり、出力がモニターへと移行しても、その仕組みの本質は特定の視点とフレームが作り出す「単一視点」であり続けました。しかし世界がビジュアルに求めている「その場にいるかのような実在感」という新たなニーズに対し、GYBOWが創り出すシズル感あふれる光空間を、特定のフレームに縛られず丸ごと記録できないか、この仮説を検証するために選んだアプローチが、3D Gaussian Splatting(3DGS)です。

 今回のテストはインテリア(内装空間)に限定した検証ながらも、これが自動車のビジュアル運用の選択肢を拡張する一つの可能性を示していると考えています。ここで重要なのは、3DGSが最終的に提示するものは「スペーシャル(空間的)」な世界である一方で、そのデータを採取するアプローチ自体は、極めてフィジカルな「無数の平面の集積」であるという事実です。GYBOWが全方位ライティングを可能にするシステムだからといって、カメラ側も360度カメラを用いて機械的に記録すれば済むという話ではありません。3DGSによる高精度な空間構築の成否は、GYBOW条件下における膨大なアングルから捉えた画像をどれだけ緻密に、かつ歪みなく重ね合わせられるかにかかっています。つまり最終イメージから逆算して光と面を構築する「従来から続く撮影技術」が、新しいメディアのクオリティー担保にもそのまま必要とされたのです。

インパネ上をくまなく何百枚とスチル撮影をしていき、最終的に専用ソフトで仕上げてデジタルツインとする。
GYBOWは一枚撮るのに30秒掛かるので、すべて撮り終えるまでに膨大な時間が必要だが、一旦できてしまえばあとで多彩な用途に活用可能。写真は撮影したカメラポジションの一部。 インパネ上をくまなく何百枚とスチル撮影をしていき、最終的に専用ソフトで仕上げてデジタルツインとする。 GYBOWは一枚撮るのに30秒掛かるので、すべて撮り終えるまでに膨大な時間が必要だが、一旦できてしまえばあとで多彩な用途に活用可能。写真は撮影したカメラポジションの一部。

03. 既存要素の「再編集」が生み出す、デジタルツイン領域へのポテンシャル

 ここで特筆すべきは、今回マッチングさせた3DGSとGYBOWという二つのコンビネーションが、決して突発的に現れたSF的新技術ではないという点です。3DGSはコンピュータビジョンの数理的探求から生まれ、GYBOWはグローバルに共通する自動車撮影の現場において、必ず直面する課題解決に向けたきわめて実践的なアプローチから生まれました。これらは本来全く異なる文脈から生じた潮流です。

 スタジオ撮影の効率化や表現の拡張を主眼に置いていたGYBOWが、その「全方位」という物理的特性によって、VRやデジタルツインといった「スペーシャル」領域へと極めてシームレスに適合しやすいポテンシャルを秘めていたという気づき。そして特別なハイテクに依存しない実直かつ高精度な機材が、結果として仮想空間のクオリティを保証する確かな架け橋になっているという確信。これら二つの「気づき」と「発見」は、機材が潜在的に備えていた機能と現場におけるクリエイティブな探究心とが、ここに美しくも偶発的な呼応を見せてくれた証左だと実感しています。

Spatial Capture Director : 羽深 俊幸<br><br>

3DGSで切り取られたいくつかのアングル。インパネ上の任意の視点から画像を作り出すことが可能なので、論理的に動画の書き出しも可能となる。GYBOWと組み合わせることで環境に沿ったライティングが可能となり、一度構築したライティングと背景とを崩すことなく何百枚もの写真を撮り終えることができる。 Spatial Capture Director : 羽深 俊幸

3DGSで切り取られたいくつかのアングル。インパネ上の任意の視点から画像を作り出すことが可能なので、論理的に動画の書き出しも可能となる。GYBOWと組み合わせることで環境に沿ったライティングが可能となり、一度構築したライティングと背景とを崩すことなく何百枚もの写真を撮り終えることができる。

04. モビリティデザインの思想と響き合う、オンスクリーンUXの可能性

 これまで述べたように、GYBOWと3DGSの融合は豊かな質感と実在感の両方を備える空間データを生み出しました。それは単なる平面の画面表示を超え、空間そのものを知覚させるUX(ユーザーエクスペリエンス)の扉を開くものです。この新しいアプローチは、様々なビジネスシーンにおいてこれまでにない「体験の社会実装」を可能にするポテンシャルを秘めています。

 近年の自動車デザインはコックピットにおける洗練された統合型インターフェースに代表されるように、プロダクトそのものがドラスティックかつ美しく進化を遂げています。クルマ、あるいはモビリティという存在の定義や、社会における役割がこれほどの変革期を迎えている今、自動車のビジュアルを伝えるプラットフォームであるWebやスクリーン、あるいは台頭するVRの世界もまた、そのデザイン思想と歩調を合わせるべき局面にあると考えます。だからこそ、圧倒的な質感表現とリアリティを両立したこの空間データは、変革期にあるデザインビジネスやUXデザインにおける起点として機能するはず。その秘められた品質に確かな手応えを感じつつ、これから重ねられる様々な検証を通じて、このデータが新たな体験価値やUXの扉を開いていく未来に大きな期待を寄せています。

Gallery 02

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Photographer : 遠藤 匡、細川 類、山廣 良輔、岩﨑 慧<br>
GYBOW_Operator : 深谷 征生、平松 大地(VIG) <br>
Image Editing : 深谷 征生、入江佳宏、松本 康希、相坂 宜丈<br>
Producer : 山村 健人、碓氷 和憲、簾 希里子、Tio Jeremy Ryan、田邊 恵 Photographer : 遠藤 匡、細川 類、山廣 良輔、岩﨑 慧
GYBOW_Operator : 深谷 征生、平松 大地(VIG) 
Image Editing : 深谷 征生、入江佳宏、松本 康希、相坂 宜丈
Producer : 山村 健人、碓氷 和憲、簾 希里子、Tio Jeremy Ryan、田邊 恵

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株式会社日本デザインセンター 画像制作部
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