CGデザイナーが語る、クルマの動画制作

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Vol.14

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日本デザインセンター画像制作部 CGチーム

CGデザイナーが語る、クルマの動画制作

〈 後編:画像制作部だからできること 〉

フォトグラファーがCG表現にもたらすもの

撮影、3DCG、イメージエディティング。異なる専門性を持つメンバーが集まり、人の心を動かす本質的な価値を可視化していく画像制作部。CGデザイナーから見た、この部署の強みとは何でしょうか。

荻野:他の職種と密に意思疎通しながら制作できるところですね。例えば、ロケの後にUnreal Engineで制作した背景に、クルマを入れて映像をつくったときのことです。すべてCGでカメラワークを設定して、クオリティの高い映像ができました。ただ、完成したものをフォトグラファーに見せたときに「この映像も十分いいんだけれど、もっとリアルにできないか」と意見をもらって。そこで、フォトグラファーと議論をして、マッチムーブ*5で使われているオブジェクトトラッキングという手法を活用することにしました。

オブジェクトトラッキングとは、実写の映像内で移動しているオブジェクトの動作を検出し、解析ソフトでカメラと被写体の関係性を割り出していく作業のこと。今回は過去にフォトグラファーが撮影した動画からカメラとクルマの挙動をオブジェクトトラッキングで抽出し、Unreal Engineで制作した映像に持ち込んでみたのだそう。その結果、どんな変化があったのでしょうか。

荻野:実際に走っているクルマとそれを撮影しているカメラの挙動が反映されて、道路の起伏を感じる活きたカメラワークになりました。カーブを曲がるときも、フォトグラファーが動画を撮影したときに感じたであろう重力が反映されて、より自然な仕上がりになりました。つまり、彼らが撮影のときに行っているアプローチをCG上で再現することで、ぐっとリアルな映像になった。こんな風に、撮影現場で培った知見やスキルを持つフォトグラファーが身近にいて協力して制作できることや、彼らが撮影したデータのストックが大量にあることが、画像制作部の大きな強みだと思います。

山上:画像制作部のフォトグラファーは、合成に対する理解度がとても高いんです。そもそも、マッチムーブ用のクルマの撮影をできるフォトグラファーが社内にいるというのも、制作会社としては珍しい。この環境とスキルを活かして、これからさらにマッチムーブに力を入れていきたいですね。

ロケの後にUnreal Engineで制作した背景に、クルマを合成。 ロケの後にUnreal Engineで制作した背景に、クルマを合成。

マッチムーブを活用し、フォトグラファーが撮影した動画からカメラとクルマの挙動を抽出。CG動画における活きたカメラワークを追求した。

CGでしかつくれないリアリティを求めて

日々、クルマの動画制作に向き合いながら、CGの新たな可能性を探る3人。最後に、CGデザイナーとして大切にしていることを聞きました。

川﨑:Unreal Engineのような今勢いのあるソフトでどれだけ独自性のあるものをつくれるか、VRやメタバースなどの新しい仕組みに対してどんなアプローチができるかを、最近は常に考えています。

山上:CGのメリットを最大限に活かす表現をすることです。例えば、CG上ではライティングが自由にできるので、クルマをかっこよく見せるために光源ではない方向から光を当ててみたり。とはいえ、CGはあくまで手法であって、CGだと気づかれないことがリアルだと思っています。演出をしすぎて不自然に見えたり、リアリティがなくなってしまうとだめなので、その匙加減が難しいですね。

荻野:お客さんが何を求めているかを汲み取って、それを盛り込むことですね。クルマは商品なので、すごくリアルに見えても目立たないと意味がない。「ここが売りだろうな」というところに焦点を持ってくる見せ方を意識しています。ただ、クルマは面が複雑な分ライティングが難しい。リアリティを求めつつ、いい商品に見せるというのが大切にしていることでもあり、苦労していることでもあります。

次々と新たなツールや手法が登場する、まさに日進月歩なCGの世界。めまぐるしい変化を追いかけながら、「CGだからこそできるクリエイティブ」をめざして、これからも画像制作部のCGデザイナーの挑戦は続きます。

*5. 映像制作における合成技術のひとつ。実写映像のカメラの動きをトラッキングし、その動きを3DCGソフトに取り込み、CGの映像に合成する手法のこと。