誰もがフォトグラファーになった
「スマートフォンを持っている人=フォトグラファーと言ってもいいと思います。それくらい写真が身近な時代になりました。今はInstagramをはじめ、SNSに写真をアップすることが当たり前。自分が『いいな』と思った瞬間を切り取って、それに『いいね!』が集まる。プロのフォトグラファーより『いいね!』を多くもらっている人もたくさんいます。しかも、すごく自然な写真を撮りますよね。ここ数年で、写真を撮るという行為が特別なことではなくなりました。露出を測ることも、ピントをあわせることもせず、いい写真が撮れます。写真に対するリテラシーも高くなった。その変化はクライアントも感じ取っています。日常的にいい写真に触れているユーザーへ向けた広告やカタログを作りたいわけですから。クルマの写真で言えば、その答えがフォトリアルなんだと思います。作り込まれた写真ではなく、自然な1枚の絵であること。ニーズの変化は撮影を通じて実感しています」。
C-HR カタログより
過去を一度、否定してみる
「これまで培ってきた技術に頼って撮影していると、表現方法が古いのではと感じるようになりました。クルマの撮影なら、カタチをキレイに見せることだけに注力していてはダメです。とても大事なことなのですが、それだけではユーザーの心に響かなくなった。最近は、あえて手を加えない勇気を持つようにしています。たとえば、ライティング。これまでクルマのメッキ部分を撮影するときは、しっかりライトを寄せて撮っていたのですが、あえて止めました。少し崩すというか、自然に見えるギリギリのラインを探っています。クルマの撮影に携わるようになって15年が経ちますが、蓄積してきたノウハウに縛られてしまっては変化に対応できません。これまで常識だと思っていたことを、一回否定してみることも大切です。カタログのデザインが変われば、そこに載せる写真も変わらなければいけません。そこに応えられる表現に挑戦しないとプロとして認めてもらえないと思っています」。
86 カタログより
柔らかい自分でいること
「ここ数年、感情が写った写真というか、機械的ではなく人間的な写真が求められています。そのとき、大切にしていることは、他人の意見を柔軟に取り入れること。やはり、一人で考えられることには限界があると思うんです。自分のやり方や都合を押しつけてもいけませんし。他人の考えを聞くということは、自分の考えを疑うきかっけにもなりますから。また、最近は動画の撮影にも携わっているのですが、動画の発想を写真に取り入れられないかと考えています。動画の自由な表現を写真に取り入れたら面白いと思うんです。ブレ方の表現など写真を撮った瞬間の前後の動きまでも感じられような。とにかく、さまざまな要素を写真に取り入れて、これまでの自分を少しずつ壊していく。時代が求めるニーズに応えるためには、これまでの自分に固執しないことが大事だと思います」。
CAMRY カタログより
柳 忍
画像制作本部 フォトグラファー
1977年新潟県生まれ鳥取県育ち。東京総合写真専門学校卒業。2002年からフリーランスで日本デザインセンターのクルマ撮影スタッフとして従事。2010年、日本デザインセンター入社。最近の仕事に、トヨタ自動車「C-HR」、「TOYOTA 86」、「カムリ」カタログなど。