表現の可能性を広げる、CG動画

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Vol.9

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日本デザインセンター画像制作部×映像企画室

表現の可能性を広げる、CG動画

〈 前編:無印良品「Good enough Living アニメーション」 〉

実写では撮影が不可能なものや、商品・サービスの概念など
カタチがないものも自由に表現できる「CG動画」。
今回は2つのCG動画の制作を担当した映像ディレクターとCGデザイナーに、
それぞれ制作秘話について語ってもらった。

CGに温度感を持たせる

真っ白な画面上に、黒い線で描かれていくソファとベッド。無印良品の「Good enough Living アニメーション」は、商品機能をわかりやすく訴求するために制作されました。制作を担当した映像ディレクターの深尾は、アニメーションを制作する上で大切にしていることを教えてくれました。「一般的にCGは人工物のため、温かみが感じられず冷たいと言われます。なので、アニメーションを制作するときは、アールの柔らかさや、あえて動き方によどみを持たせることで、素材の質感や温度感のある映像を制作しようと考えています。僕はそれを『ざらつき』と呼んでいますが、それは担当CGデザイナーにも何度も伝えました」。映像の表現内容というよりは、あくまで映像上のテクニックとして心がけていることだそうです。線の太さやカメラアングル、動き方など細かく注意を払うことで、見る人の心に響くCGが生まれていきます。
Good enough Living アニメーション:ユニットソファ

骨格をつくり、性格をつけていく

「アニメーションは、ラテン語の霊魂を意味する『アニマ』に由来した言葉。つまり、魂を宿さないとただ動いている絵ということです」。プロの制作者として、その意識を常に持っていたいという深尾。アニメーションを作ることは、ある意味一人の人間を創ることでもあります。それは、深尾が描くコンテは骨格であり、CGデザイナーが血肉を作っていくということ。今回、CG制作を担当した山﨑は「最初、コンテを見たとき、淡々としたアニメーションだなという印象でした。ただ、それが深尾さんの考える無印良品の骨格。そこにどんな性格を持たせるか。CGはもちろん、BGMや動き方などによっても映像の性格は変わってくるので、細かい部分はお互いに確認しながら進めました」と制作当時を振り返ってくれました。何か一つ変えるだけで性格が女性的に見えたり、男性的に見えたりと全く違うものに変わってしまう。最終的な仕上がりを互いに意見を出し合いながら、映像の性格を探っていきます。
Good enough Living アニメーション:ベッドフレーム

商品の特長を可視化する

「今回のアニメーション制作では、無印良品の商品が持っている『ここが優れている』という点をはっきりと示すことに注力しました。そのため、可能な限り商品以外の要素を付与していません。また、一筆書きのようにワンカットで表現した意図は、商品の特長をわかりやすく可視化するためです」。深尾が考えたのは、ひとつながりで見せることで、画面から興味を引き離さず、商品特性を理解してもらう表現でした。そして、それはアニメーションだから可能な表現でもありました。「大切なのは、自分の頭を柔らかくすること。柔軟に発想することが、面白いと思える映像につながると思います」。面白い表現にしなければいけないと考えるのではなく、どうしたらわかりやすく伝わるかを考える。目的に合わせた映像手法を追求してくことで、アニメーションにしかできない表現が生まれていきます。

Client 良品計画
Art Director 原 研哉
Designer 大橋 香菜子
Copywriter 長瀬 香子
Movie Director 深尾 大樹
CG Designer 山﨑 孝昇
Production Manager 中島 友彦
Music 清川進也(社外)