シネマグラフから見えてきたもの

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Vol.3

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日本デザインセンター画像制作部

シネマグラフから見えてきたもの

〈 後編:発展させてみる 〉

クルマチーム、シネマグラフの枠を超えて

新宿の街をクルマだけがゆっくり動いてゆく。この作品には相当の時間が費やされています。いろんな時間、いろんな場所から道ゆく人を撮影したあとレタッチ作業へ。クルマの前にいる人を止めるのはそう難しくはないのですが、クルマの後にいる人を止めるのは非常に繊細な作業が必要になる。何百、何千という画像をひとつひとつ止めていく処理をして、このビジュアルは完成しました。これが実際の仕事であれば道路の使用許可を取ったり、良い位置にエキストラを配置して撮影するでしょう。しかし自主制作の面白さは用意しすぎないこと、むしろ不完全であることにあります。頭の中にある描いたイメージをトレースするだけで終わらせない。そんなスタンスがシネマグラフから発展させた絵を作り出すコツでした。
クルマの横に女性がたたずみ雨が降っている作品はシンプルなレタッチで、3〜4時間程度の処理で完成しています。

シネマグラフの活用法

既存のサイトの一部をシネマグラフに変えることや、紙媒体をWebに展開する際にシネマグラフを取り入れるなど、Webサイト上ではますます見かけるようになるでしょう。クルマの機能を説明する際にシネマグラフを使っている例もあり、そのような使い方も増えていくでしょう。クルマでいえば、シネマグラフの高い表現力を活かして上質感や臨場感が増したというような作品も追求したいと考えています。百貨店の一階にある化粧品のポスター代わりに使っても面白いかもしれません。ともすれば風景の一部になってしまっているそれらの一部がキラッと動くことで、お客さまが足を止めるかもしれない。
そのほかにも一枚の絵の中で何十箇所も動いているものや、逆に動いているのか動いていないのかわからないくらいの最小の動きでメッセージを伝えるもの、順番にどこかが動いていくようなものなど、たくさんのアイデアや構想があります。

自主制作の必要性と面白さ

仕事の目的はクライアントの課題を解決することで、画像制作はそれに応える手段のひとつです。当然さまざまな事情があり、モラルがあり、制約があります。たくさんの人が関わるため、モデルの洋服ひとつをとっても自分の意思だけでは決められません。しかしそれらの制約は、得てしてやらないことの理由になってしまうことがあります。本来クリエイターはすべてを決める力が必要な職業。無限のアングル、タイミング、形、色…に関して全責任を負う立場にあり、自主制作においてはその力が試されます。
これからも積極的に自主制作に取り組み、純粋なクリエイティブの喜びをそれぞれの力にしたいと思っています。